Google PicasaとWindowsフォトギャラリーどちらも無料で使えるフォトアルバムソフトウェアである。その二つを比較してみた。
特に、これまでとは違った概念が多く取り入れられているPicasaを中心に説明することにしよう。
まず、GooglePicasaの最大の特徴は、ファイルやフォルダという概念を徹底的に排除しようというように見える。言い換えれば、パソコンの概念(たとえばフォルダやファイルという概念など)を知らなくても使えるものを目指しているように見える。
その意図はいろいろな箇所で見られる。
まず、一つ目はインストールしたとたんに、マイピクチャやデスクトップの写真や動画を勝手にアルバムに取込み始める。正直びっくりさせられる。それを止めることも容易ではない。もちろん止められなくはない、ツール>ファイルマネージャーをクリックすると、コンピュータのフォルダリストが表示されるが、そこに勝手に付けられている読み込みフラグ(目玉の絵なのだが)をはずして、やっと、その勝手な取り込みを止めることができる。おそらく、コンピュータを使いなれていても、Picasaを初めてインストールした人はその止め方がわからないうちに、Picasaの写真アルバムが出来上がってしまうであろう。多くのデジカメの取込ソフトは、特に指定しなければ、マイピクチャにいれるであろうから、そこで、今まで使っていた写真アルバムソフトを一気に乗り換えさせてしまうちょっと強引な戦略であるとも映る。
もちろん、ドライブやフォルダを指定すれば、そのフォルダから写真が取り込まれる。取り込まれるという表現は誤解を生むかもしれない。リンクが張られるという方が近いだろう。原本の写真を加工したり、そのフォルダに新しい写真を追加しても、自動的にPicasaのアルバムも更新されるようになっている。
これは、初心者にとっては、非常に使いやすいと言えるであろう。アルバムソフトにどのフォルダを対象にするかという設定は必要なくアルバムが出来上がってしまうからである。しかし、「あとで選択する」という選択肢があってもよいと思う。人のうちに土足であがってくる感覚だ。
それにくらべてフォトギャラリーは紳士的である。はじめから選んだフォルダだけをアルバムの対象にする。
二つ目は、Picasaは写真や動画の入っているフォルダがどんなに深い階層であろうが、末端のフォルダ名でソートされ、それが、アルバム名のように表示されるところであろう。その一覧は左側に一覧で表示され、右側には、そのフォルダを中心として写真のサムネイル(縮小版)が表示される。フォルダという概念はそこではもう見えない。もちろん、フォルダツリーの表示にすることもできるが、階層を表示しないこちらの方がメインであろう。これには便利な点がある。たとえば、これまで、写真のフォルダをマイドキュメントに「パパの昔の写真」、D:ドライブに「娘の写真」、Eドライブに「息子の写真」とバラバラになっていたとしても、最終フォルダ名にたとえば「2009年05月 誕生会」というような、年月日で統一しておきさえすれば、フォルダの名前でソートという選択をすれば、年代順にその家族の写真が順に見られるというところである。
ただ、これはサムネイルが連続して見られるのであって、大きな写真のサイズにするとその末端のフォルダの中で閉じており、次のフォルダの中を大きな写真で見るには、一旦、画面をサムネイルの表示画面に戻さなければならない。そこが、便利なようで考慮がされていないところである。フォギャラリーには、選択した複数フォルダを超えて、写真を大きなサイズで順番に見るという機能がある。
三つ目は、写真の加工処理である。その加工処理はきわめてシンプルで使いやすいことは当然であるが、その加工処理をした結果を、上書きするか、別名で保存するか といった、普通の画像編集ソフトにある概念はない。加工すれば、自動的に置き換えられる。だから、いろいろ加工して、どれがどれだか迷うようなことはない。では、加工した結果、あとで、失敗だと気づいても戻せないのかという疑問がのこるかもしれないが、それは違う。加工前の原本はもちろんのこと、加工途中のものも、隠しファイルにすべて持っている。したがって、その加工している時ももちろんであるが、一週間後にやっぱり切り取り過ぎたと行ったときも、その写真を表示して、もとに戻すボタンをおしていけば、順々に前の写真にもどって表示される仕組みになっている。また、そこで行った修正はそこで、リアルに修正されているように見せかけているが、実は更新の反映ボタンを押して初めて更新に入るしかけになっている。しかし、このボタンの意味がわからない初心者はいるであろう。
使いにくいところとしては、別名で保存しようとしても容易ではないことであろう。また、別フォルダを新しく作ってそこに加工したものを集めることも困難である。picasaは写真や動画が入っていないフォルダはフォルダとしてまったく表示しないからだ。たとえば、新しく事前に空フォルダを作成し、そこに写真をまとめようとしても、Picasaからは、そのフォルダをみることはできない。無理矢理にでもダミーの写真を入れておかないとPicasaはフォルダを無視するのである。
Picasaを使用している中で、そういった新しいフォルダを作成したり、別名で写真を保存するには、フォルダ一覧を右クリックし、「保存のフォルダを開く」という項目を選択する。すると、そこには突然windowsのフォルダの操作に戻るようになっている。そこでは、picasaとの連動はなく、自分でコピー>貼り付けし、名前を変更するというまさに、windowsのエクスプローラにつなげているだけである。まさに、パソコンしたいなら、windowsに戻ればいかが?という突き放した感じである。
四つ目の、特徴は写真加工にあるが、その中に、傾き修正というのがある。これは写真に升目が重なり、それを横のバーをスライドさせることによって、リアルに写真の傾きを目で見ながら修正できるところである。多くの編集ソフトは単純な90度回転であるか、角度の度数を数値でいれるものであるが、こちらはビジュアルである。紙写真をスキャンしたときの修正には使いやすいものであろう。しかし、細かいことをいうと、その升目がとても粗いこと、また、写真の下部分にその調整バーが重なっているため、水平かどうかを見極めたい写真下の部分が見えないなど、無神経なところもある。他に気になることはオークション出品で使いたくなるリサイズとかはないこともある。
さらに大きな違和感があるのは、写真の画面表示のサイズが、スライドショーにしないかぎり、意外に小さいということ、かつそのサイズは固定であるということである。かつ画面の中心に位置しない点も気になる。余計な操作画面がジャマをして、写真の領域を大きく食っているのはどうしたことか。
それにくらべ、フォトギャラリーは、GooglePicasa2より保守的である。アルバムとしても使えるし、加工修正としても使える。これにもフォルダを超えて閲覧できるという概念があるが、それはあくまでも、複数選択したフォルダを超えて見られるということである。しかし、こちらの場合は、大きな写真にしたままで、フォルダの壁を越えて、スクロールで見られるという長所ももっている。
ただ、こちらは90度レベルの回転はあっても、傾き修正はない。
その他の機能は、他の写真閲覧ソフトをカバーしているといったものであるが、全体のバランスはパソコンになれている人にとっては、丁度よい感じではないだろうか。
さて、ここまでは、二つの共通のことはまり触れなかった、オンラインで公開できたり、自分のブログやサイトに公開できるなどである。そういう共通のことを除いて、この二つを使ってみた総合評価とあえて言うならば、パソコン苦手の人にはPicasaだろう、しかし、パソコンを使い慣れている人は、picasaではもどかしいことも多く、普通にフォルダやファイルの操作ができるのであれば、フォトギャラリーが使いやすく感じるだろう。
しかし、Picasaを初心者向けとは言ったが、もし、そういう人たちをターゲットとしていると仮定するなら、中途半端なインターフェースではある。初心者を取り込むなら、紙焼き写真のいわゆるアルバム形式も選択できるようにすべきであろう。たとえば、アルバムインターフェースのソフトである「蔵衛門」などは、従来の紙アルバムのインターフェースに徹している。PicasaはGoogleらしい挑戦だとは言えるが、すこし、ジャンプしすぎ、かつ独りよがりの感がある。もっと、利用者の立場に立てば、違うはずである。
しかし、いずれのソフトにも言えることであるが、どちらも現在の多様化した意図(したいこと)や知識レベルの現状をみるなら、どちらもこれ一本というメジャーにはならないであろう。
無料ソフトで多くのユーザを囲い込もうとしたいのなら、意図(したいこと)や知識レベル別にインターフェースを選択、追加/変更できるようなものにすべきであろう。
利用者のパソコン知識レベルの順に言うならば、紙アルバム形式の蔵衛門+picasaのフォルダ超越概念+フォトギャラリーの中間レンジ+もう少し踏み込んだ+フォトショップといった機能を備えながら、いかに、それらをその人のしたいこと、知識レベルに合わせて、簡単に使えるように見せるかに知恵を絞ってもらいたいと思う。
まだ、世の中は、デジカメで撮った写真をパソコンを使わず、プリンターで印刷している心理的段階なのである。
筆者の経験済み関連ソフト例:蔵衛門、ViX、susie、Leeyes、IrfanView、JTrim、PAINT.NET、GIMP、PAINTSHOP、イラストレータなどなど